甲斐駒・「赤石沢奥壁中央稜」 「Aフランケ赤蜘蛛」 2002年8月19日(月)−22日(木)

メンバー L・角屋  斎藤(広)  山本
(記) 角屋

19日 入山
 台風が再接近する19日、我々3人は、新宿発7時の「あずさ1号」に乗り込み、甲府へと向かう。道路状況によっては黒戸尾根から入山の可能性も考えながら、とりあえず芦安村役場に北沢峠までの状況を尋ねたところ、「今のところは北沢峠までバスも運行している」とのことで、急いでタクシーで入山。しかし、広河原で2時間あまり、12時30分まで待たされることになった。しかも状況次第では運休もありうるとのこと。
 12時過ぎにアナウンスがあり、予定通り12時30分にバスが出発すると告げられ、雨の中のヴィヴァークは嫌なので、「長衛荘」に予約を入れる。
 こうして、入山は半日遅れとなったが、おかげでぬくぬくと快眠できることに相成ったのである。
20日 岩小屋へ
 せっかく広さんがセットした目覚ましに気が付くものが居らず、1時間遅れの5時に起床。すぐに出発。雨はやんでいるものの、あたりはガスに包まれている。しかし、もうこの時間ではヘッドランプは必要ない。双子峰に近づくにつれ、周りの峰みねが雲の上に頭を出し始めた。仙丈、栗沢山、北岳。そして、駒津峰につくと中央アルプス、御岳、乗鞍、穂高など雲海の上に浮かんでいる。行く手には甲斐駒がデーンと構えている。最高の天気になった。まさに台風一過。甲斐駒山頂でのんびりした後、8合目まで下り、930分、岩小屋に入った。
20日奥壁中央稜
 岩小屋に入った我々は、まず、右ルンゼまで行って水を確保、そして各ルートの取り付きを偵察したのでした。今日は時間も中途半端なので、短時間で登れる中央稜を登る事にしました。岩小屋で支度をし出直してきて、1P目を広さんリードで取り付く。11時。やさしいクラックから草の生えたフェースを登り、伸ばせるだけロープを伸ばして立ち木でビレー。セカンドの僕はヒロさんを追い越しU級の歩き。リングボルトが1本打たれたフェースに到着。(2P目)
 3P目は2通りのルートが取れるらしいが、我々はフェースを直登するルートを選んだ。サルティンがA0で取り付こうとするが、どうしてもフリーにうつれず、僕と交代。短いフェースを登りブッシュの中をスッキリしないクライミング。だけど1箇所だけオフゥウィドゥスの楽しいポイントあり。
 今度こそ、と4P目にサルティンが取り付く。凹角の上が見えないが、登ってみるとすばらしいフレーク状のクラックで、ルート中一番楽しいpitchだった。
 後は延々とブッシュを登っておしまいかと思いきや、稜線の登山道に上がる手前に、ちょっといやらしいスラブが有った。すでにアプローチシューズに履き替えてしまった我々は、そのまま登ったが、W程度。ルート図にはこのpitchのことは書かれていなかったので、間違えたのだろうか。
 この日はそのまま岩小屋に帰り、ちょっとAフランケへのアプローチを偵察。その後は寛いだ。後で下山してから分かったのだが、この日から急に気温が下がり、山の上では夜中に結構冷え込んだ。岩小屋の入口も塞がず、シュラフカバーだけの我々は寒い思いをしたのでした。
21日 Aフランケ赤蜘蛛
 昨日の偵察のおかげでほとんど迷わずアプローチできた。もしぶっつけ本番だったらかなり迷っていただろう。それにしても嫌なアプローチだった。下りに下る。「これでもか!」と言うくらい下る。甲斐駒から下山してしまうのではないかと思った。下降途中に見える八丈沢の岩場はすばらしい。右上する見事なクラックが走っている。無意識のうちに、岩にラインをひてしまっている。
 Aフランケ基部に到着して少し離れた所から取り付きを確認。早速支度をして取り付く。
 1P目。人工はやっぱりヒロさん。出だしのハングを越え、遠いボルトも難なくこなし、取り付きからも確認できるテラスに到着。僕とサルティンが時間差でフォローする。リーチの足りないサルティンもヌンチャクのおかげで苦労することは無かった。
 2P目。クラックのフリーは僕の出番。やさしいフレーク状のクラックはボルトも打ってあり、ちょっと拍子抜け。ボルトなんていらないのに・・・.ビレー点があるが無視して、続くコーナークラックにつなげる。ここは快適なクラック。ジャムが気持ちよく決まる。ただし、ここも不要なボルトが多い。ロープもいっぱいになる頃、非常に頼りないビレー点に到着。カムとナッツで支点を補強してふたりを迎える。
 3P目。右にクラックがツ続いているのに、ルートは左のフェースにボルトラダー。サルティンがリードする。短いピッチで、あっという間にビレー点へ。フォローはフリー混じりで抜ける。
 4P目。V字ハング。ヒロさんがリード。ハングを越えるとリードは見えなくなるが、ロープの流れが速くなるので、やさしいフリーになった事が分かる。フォローしてみるとV字ハング自体もホールドが豊富で、フリーでもいけそう。でも結構ロープが出ているので、落ちたらロープの延びで戻れなくなるかも・・・。ハングを越えるとちょっとザレたスラブ、そして階段状の岩。唯一のんびり寛げるテラスに着いて、暫し休憩。
 5P目。フリーのピッチなので、申し出て僕がやらせてもらう。美味しい所だけやらせてもらってすみません。ルート図ではX級、40mとなっているが、全然間違い。出だしはやさしいクラック。そして傾斜の緩いフェースを左から回り込む。V+、20mが妥当。
 6P目。恐竜カンテ手前の長いクラックを人工で登るピッチ。ここは粘り強いヒロさんが最適。ところが登り始めてすぐに失敗に気が付く。ヒロさんは出だしから見た感じでボルトラダーが続くと思ったか、カムを持たずに登ってしまった。しかし気づいた時には、もうだいぶ登ってしまい、降りるのも大変。カムを吊り上げるにも、1本のロープを解除しなければならず、仕方なく手持ちのナッツ1セットで架け替えながら登っていった。アングルハーケンも1本打つ。それにしても粘り強い!フォローの僕はカムを使い比較的楽に登れたが、ヒロさんが打ったアングルが抜け、ヒヤっとする。サルティンは頑張って、回収しにくいナッツなどを全て回収。ビレー点はハンギングビレー。これがなんとも恐ろしい。3人でぶら下がるのには、ボルトはたとえもっても僕の精神が持たないので、サルティンがつく前にヒロさんにスタートしてもらい、僕は上の広さんと、下から登って来るサルティンを同時にビレー。見上げると先行するフリーソロのクライマーが!恐竜カンテをするするとのぼり、我々を見下ろしている。お名前を伺ったら「リス君」でした。
 というわけで、7P目の恐竜カンテもヒロさんがリード。ここの人工はやさしいようで程なくコールがかかる。それにしてもサルティンという女、このハンギングビレーをなんとも感じていないのだろうか。よくケラケラと笑っていられるものだ。フォローしてみるとカンテに枯れ木があり、それに乗って登るが、ぐらぐらして今にも落ちそう。
 8P目。僕がリード。テラスから頭上の岩を左から巻き、ブッシュ混じりの岩の積み重なりのような所を縫ってフェースに突き当たる。ここはボルトラダーだが、フリーも可能。僕は無理せずA0混じりのフリーで抜け、またブッシュを登りロープをほぼいっぱいに伸ばす。もう終了も近い雰囲気。
 9P目。そのまま広さんとサルティンが2人同時にリード。出だしのフェースがW級ぐらいだが、短いので思い切って登り、後はブッシュの歩き。ロープが延びきってからフォローする。
 10P目。僕がそのまま歩き、15mも登ると昨日下見してあった岩小屋に出た。
 まあ、多少のミスはあったが順調。しかし3人という事もあって予想より時間がかかってしまった。8時30分頃スタートで終了が2時。予定のBフランケへの継続は諦める。時間も問題だが、もう結構充実していてみんなおなかいっぱい。
21日 「キジ撃ちクラック」開拓
 中途半端に時間が余ったので、昨日見つけたクラックを登る。
 8合目岩小屋のすぐした。Aフランケへのアプローチにはいってすぐ左脇の岩に10数メートルのきれいなハンドクラックがある。岩小屋からトラバースして、白樺の木にトップロープをかけ、少し掃除をした後登ってみた。クラックは意外と狭く、ハンドが決まる所は遠い間隔。ハンドサイズからオフウィドゥスになる所で右のカンテに移るが、手前のハンドジャムが甘い効きでここが核心か?カンテ上のフレークを使い草つきに這い上がると終了。
5.10A
。「キジ撃ちクラック」の完成だ。
22日 下山
 この日はクライミングモードはぷっつりと切れ、風呂とビールのモードに切り替わっていた。黒戸尾根をすたすたと下り、「名水公園」でビールと露天風呂。甲府までタクシーを奮発し、タクシーのウンちゃんに教えてもらった蕎麦屋でいっぱいやって帰京。このために車でこなかったんだもんね!