谷川・仙ノ倉シッケイ沢山スキー

                                       1999年平成11年4月12日(月)
                             L・吉成博 斎藤広文 古川清(記) 角屋貴良

 長い間山を続けていると、忘れられない山行に出会う事がある。この山行はそのうちの一つ
になった。                                                                     

   平標の頂上には雪がなかった。稜線は風が強く、歩きにくいスキー靴では、時々体制を崩す。
仙ノ倉近くではガスも出てくる。2,3の小さいピークを越すと頂上になる。そしてなつかし
の北尾根を降りる。この尾根を登ってきたのは20年以上も前のことになる。記憶を頼りにガ
スの中、急なクマ笹の斜面を降りる。イイ沢、シッケイ沢のコルへ。この辺り少し広く緩くな
るが、ガスの中では少し分かりにくい。尾根を登り返すと行き過ぎだ。                     
いよいよスキーを履きシッケイ沢に滑り込む。斯界は30メートル程か。角屋はさすがにウェ
ーデルンできめる。後の3人は恐々下る。急な斜面を思い切り体を振ってターンする。先が見 
えず、転ぶのが怖い。角屋は少しずつ先に進み待っていいてくれる。まるでスクールの先生と
生徒のようだ。現在位置が分からず不安な気持ちで下降するが、沢を3分の1くらい降りた所
でガスが晴れて、シッケイ沢の大斜面が姿を現した。皆が一斉に歓声を上げた。毛渡沢が遥か 
下に見える。素晴らしい大斜面だ。各自が思い思いの技術で下降する。古川はまだ足が完全で 
はなく、もう太ももはパンパンに腫れた。ようやく傾斜が緩くなると、毛渡沢は近い。       

  毛渡沢は水流が出ていた。ここは釣りに何回か来ているので地形はだいたい分かる。スノー
ブリッヂを恐々渡り、右岸に移り、林の中をのんびり滑る。バッキガ平に近くなるころ左岸に
  移るのだが、本流は濁流になっており、渡渉点を探すがない。途中、一本のワイヤーがあるが、
それも濁流に漬かっている。そのまま右岸沿いに滑り、バッキガ平の下の吊橋まで行こうと思
ったが、段々傾斜が強くなり、進むことが出来なくなった。仕方なく先ほどのワイヤーの所ま 
 で戻り、角屋が意を決して渡ったが、流れが強く、体が流され首まで水に漬かる。つまり五月 
 の鯉のぼり状態になる。足が底につかず、体全体が水に流されるようになるのだ。会装備の細 
 引きで体を縛り、カラビナをワイヤーに通し次々渡る。わずか10メートル程の渡渉だが、引 
く方も渡る方も必死。全身びしょ濡れ。靴の中もグチャグチャ。この季節、氷水のような水流
を渡り終え、びしょ濡れ状態。全員がガタガタと震え、思わず笑ってしまう。              

 気を取り直し、濡れ物を絞って乾いたフリースを着込み、先を進むが、今度はバッキガ平の
吊橋の桟がなく、おまけにワイヤーがずれて斜めになっていて、またまた緊張させられた。下
 を覗くと水流がドウドウと渦のように流れていて、思わずワイヤーにしがみつく。ようやく全 
 員が渡り終え、林道の途中まで滑り、後は除雪した道をのんびり・・・ではなく、実は角屋が 
   登り口の車の中に下の車のキーを忘れて、車にすぐ乗れないのだ。ホウホウの体で山行を終え 、
   いつもの温泉に入り、途中飯も食えずに、我が家についた頃は日付が変わっていた。           

月稜41号より